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The Global Financial Crisis - week1 "Introduction to The Global Financial Crisis"

 

antripper.hatenablog.com

 

コンピューターサイエンス系の講義は英語でも日本語でもそんなに違いはありませんが、英語でアメリカの金融について学ぶのは少々難しいです。

さっそくですが、week1の講義内容に入ります。

 

1. コース概要

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The Global Financial Crisis week1

コースは大きく4つのパートからなり、イェール大学のメトリック教授と、元ニューヨーク連邦準備銀行総裁のティモシー・ガイトナー氏によって行われます。week1では、最初の導入部を除き、ガイトナー氏が担当しました。

 

2.なぜこれが重要か?

なぜ金融機関に関して学ぶ必要があるのか→これが世界中で何度も起こる事象であり、かつ人々の生活に甚大な被害を与えるものだから。

アメリカでは1929年の危機以降、失業者数が増加し、元の水準に戻るまでに10年以上掛かったというデータが示されています。(日本は1992年の危機以降ゆったりと失業が増え、20年近くたっても元の水準には戻れていません)

また、戦争や病気による死者数は次第に減少しているのに、金融危機による損失はむしろ増加傾向にあるというのも面白いデータです。

ハイマン・ミンスキーは"Stability breeds instability"という言葉を残しました。つまり、長期間の金融的安定が人々の慢心を招き、最終的には大きな損害を生むということです。

 

3. 何が金融危機を引き起こすのか?パート1

一つ目の原因は、金融制度そのものが本来脆いものであることです。市民は、必要な時に引き出せるという前提で銀行に短期的にお金を預け、銀行はそのお金を人々を助けるために長期的に貸し出します。銀行の資産の大半がこうした「引き出されうるお金」であるため、市民が経済に不安を覚え始めた途端に多くが吹き飛んでしまうのです。

これをガイトナー氏は次のような図で解説しています。Depositの部分が「引き出されうるお金」です。

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The Global Financial Crisis week1

 

 

二つ目の原因は、市民の金融への心配が次第に大きな損害をもたらすということです。

経済成長が鈍る→市民がお金を金融機関から引き出すようになる→金融機関は資産を売却して少しでも現金を作ろうとする→資産の価格が下がる→銀行が貸し渋るようになる→経済成長がさらに鈍る という負の連鎖が広がり、最終的には大きな危機へと繋がります。

 

三つ目の原因は、行政が初期対応に失敗しがちであるということです。歴史を鑑みると、金融危機の予兆に対する行政の対応には以下のような特徴が見られます。

  • 遅すぎる
  • モラルハザードを心配しすぎ
  • 保守的(たっぷり時間をかけることこそが安全と思っている)
  • 知識不足

 

4. 何が金融危機を引き起こすのか?パート2

金融危機は経済の急激な成長(ブーム)のあとに訪れます。

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The Global Financial Crisis week1

システミックな金融危機は、収入に対する負債の割合の増加によって起こります。上述した通り、その負債の財源が「引き出されうるお金」であればなおさら負の連鎖が起こりやすいためパニックに繋がりやすく、従来の金融政策はもはや効力を持ちません。

ガイトナー氏によれば、こうしてパニックが起きた時の結果を左右するのは以下の3要素です。

  • 負債がどの程度溜まっているか
  • 金融機関がどの程度準備していたか
  • 行政がどのような選択をするか(システミックリスクに対してはアグレッシブな政策が必要)

 

5. 何が2008-2009年の金融危機を引き起こしたか?

1930年の大恐慌以来、アメリカの経済は非常に安定していました。70年間貸し倒れ率は安定して低く、GDPは安定成長、住宅の値段も増加を続けました。先の"Stability breeds instability"という言葉の通り、人々はこの安定にかまけてリスクのことを忘れました。つまり、2007年にはアメリカの経済は非常にリスキーな状況になっていたのです。

また、シャドウバンキングの台頭も2008年の金融危機の原因だと言われています。シャドウバンキングとは、大恐慌後に確立された金融安定化のための規制の外側にいる金融機関のことで、ヘッジファンドなどを含みます。銀行への規制が強まるにつれ、相対的により多くのお金がこうした組織に流れるようになりました。

行政はシャドウバンキングを抑制する権力を持たなかったことも金融危機を防げなかった一因だとされます。